雨飾山・前沢奥壁・右ルンゼ正面雪壁 [雪ウサギ野道]

クラシックルート雨飾・南尾根に、エキサイティングな彩を添える。

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雨飾山・前沢奥壁・右ルンゼ正面雪壁の滑走ライン

データ

注記:他に公表された滑降記録はない様なので、今回が初滑降と思われます。この斜面を指す適当な通称がないため、「前沢奥壁・右ルンゼ正面雪壁」と表記し、ルート名として「雪ウサギ野道」を提案させて頂きました。

雪ウサギ野道の滑走シーン1

雪ウサギ野道の滑走シーン2

踏査記録

メンバー: 須藤正雄、小川嘉博、佐藤康彦、外山勝
装備:ピッケル・アイゼン・ビーコン・ショベル・ロープ(8.5mm*50m)・ハーネス・ほか

2007年2月25日(日)
南尾根〜東峰・P1間コル〜前沢奥壁・右ルンゼ正面雪壁を滑走〜1650m付近からトラバース〜南尾根

05:30
未明、栃の木亭前を出発。

09:30
南尾根を登り、P2に到着。青空に雨飾の双耳峰が映える。正面雪壁についたトレースは人か、獣かと話していたら、ウサギが目的の滑走ラインを一直線に駆け上がっていくのを目撃。なぜ、こんな急斜面意いたのか?「ここの木の芽はとりわけ味が良いと、ウサギたちに知れ渡っているから。」というのが須藤さんの説。

11:00
正面雪壁を下見しながら登り、東峰・P1間コルに到着。滑降路は、硬く大粒のザラメ雪の上に3〜4cmの新雪。日差しのおかげで、斜面に立つ事に問題はない。が、小雪で滑走スペースが狭く、岩などの露出も多い。外山さんは、今回の滑走を見送り、サポートにまわる。(もっとも合理的判断!)ほか3名は、100%純粋横滑りの可能性大、でも、試してみようと決める。

11:50
細長く切ったテラスで、スキーに履き替え、滑走開始!
一番手は私小川。ズラシの多い斜滑降で、5mほど高度を下げ、大きな露岩の下に入り込む。表面の新雪はあっという間に払われ、岩の起伏が、薄いザラメ雪の下に透けて見えた。スキーの軌跡をどう思い巡らしても、成功する確信が持てない。横滑りでさらに10mほど高度を下げる。まだ少し不安定そうな部分が見える。まあ、少しだけなら何とかなるか。散々雪面を突っついてみた後、思い切って飛ぶ。着地の瞬間、腰が斜面に触れた。最初のターンは、いつでも紙一重に感じる。斜面の終わり近くで、ようやく何度か連続ターンができ、その下の45°部分も30〜40mほどつなげて滑って停止する。

次は、佐藤さん。ツインチップスキーの特長を活かした、スイッチも交えながら堅実にこなす。
そして、最後は須藤さん。上部は安全にいなし、斜面後半で、鮮やかなジャンプターンを決めた。

12:20
みんな無事に滑り終えた、と思った直後、トラブルが発生した。動画撮影中の小川が、スラフの直撃を受け、ザック等を丸ごと流してしまったのだ。危険箇所に無防備に陣取っているなんて!

13:30
沢底を覗きながら、側面の潅木帯を1650m付近まで下ってみるが、ザックは見つからない。回収をあきらめて、南尾根へ向けてトラバースを始める。
南尾根のブナ林には、まだ極上の新雪が残っていた。

16:00
大トラブルがあったにしては早く、栃の木亭前に帰り着く。山すその向こうに、今日滑ったとびっきりの急斜面が、ひょっこり顔を出しているのが見えた。

(小川)