八海山・南面・屏風沢

八つ峰稜線から南向きの大斜面へ

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八海山・南面・屏風沢のルート写真

データ

八海山・南面・屏風沢の滑走シーン1

踏査記録

2008年3月2日(日)
新開道尾根〜八つ峰東端の岩〜屏風沢滑降〜新開道登山口

メンバー:
須藤、小川、佐藤 (新潟稜友)
森 (RSSA)

装備:ピッケル・アイゼン・ビーコン・ショベル・ロープ(8.0mm*30m)・ハーネス・ほか

冬の八海山八ッ峰を登るたびにこんな斜面を滑れたらいいなと思っていた斜面がある。八ツ峰の岩峰基部から標高差1000mを吸い込まれるように一気に谷底まで落ちている真っ白な大斜面、屏風沢の上部斜面である。 お楽しみだけの山スキーをやっていた頃は自分には次元の違うレベルの夢だと真剣には考えていなかった。しかし、去年から小川君の45度超ハンター?に付き合ううちに夢から実現可能な現実の課題に変わった。

滑降可能な時期は2月中旬から3月初旬の短い期間だけ。早すぎれば最近の暖冬で雪不足、遅ければ雪崩のリスクが大きくなるばかり。さらに当日に天候が良く雪が安定していることが条件で滑降可能のチャンスは非常に小さい。今回ファーストトライでの達成と最高の滑りができたことは非常に幸運であったと思う。

メンバーはいつもの小川、佐藤とRSSA(スキーアルピニズム研究会)の中でも越後の山好きの森さんの4人。前夜泊は小川邸にお邪魔になる。お母さん手作りの御馳走での歓待にいつも感謝するばかり。明日は昼過ぎから天候回復の予報、出発は遅めに設定し11時まで飲んでしまう。

6時半、小雪の舞う中、日大の研修センター前を出発。ラッセルはせいぜい足首で自然とペースは上がる。それでも新開道の尾根に取り付くと昨日からの新雪ですね位のラッセルになりシールの効きも悪くなかなかペースが上がらない。1268mピークに着く頃には雪は止み、時より雲の合間から陽が射し始め対岸の屏風道や生金尾根を照らし出す。昔登ったことがあるだけに感慨深い。尾根上はクラストしている所が多く、傾斜が増すにつれスキー登高が難しくなってくる。1350m付近よりスキーを担ぎアイゼンに切り替える。稜線のガスは消え頭上には白く輝いた八つ峰が姿を現す。予想外に早い天候回復、良いに越した事はないのだが気温が高く雪質が悪くなる心配が出てきた。贅沢な心配だろうか。雪崩も気になるが滑走ルート上には大きな雪庇や亀裂は無く命取りになるような危険は少ない。それよりもアイゼンでのラッセルが辛くなかなか稜線が近付かない。12時を回り稜線からの滑降を諦めかけたがまたいつ来れるかの保障はない、頑張って行くとしよう。

12時半ようやく八つ峰東端の稜線の岩峰に辿り着く。暖冬とはいえ正月とは雪の付き方が違う。大日岳の高倉沢側には亀裂の入った巨大な雪庇が今にも落ちんとばかり寄り添っている。天候は快晴、雪が腐らないうちに早々に降るとしよう。

ビデオ撮影隊がカメラを構える中このルートの言いだしっぺの私がファーストトラックを描く。・・・といっても出だしは氷化した狭いルンゼ、ドタバタとジャンプターンで岩峰基部まで滑り降りる。岩峰基部からがいよいよ本番、45度超のルンゼ状から広いオープンバーンがどこまでも続いている。ここも私が最初にドロップ。雪の状態を確かめながら慎重に滑りだす。全面パウダーの期待は甘かった。ルンゼの日当たりの良い所は部分的に氷化しており気が抜けない。ルンゼを抜けると限りないフラットバーン、スラフが連続して発生するが気にせず突っ込んで行く。スラフより早く滑れば良いのだから!それが出来る斜面なんですから。 1回小雪庇の崩壊で雪崩が発生したがそこは判っているメンバー達、フォールライン上にうろうろしている者はいない。

八海山・南面・屏風沢の滑走シーン2

傾斜が30度台に落ちてくるとスピード無制限、今まで味わったことのない高速ロングターンを満喫する。懸念していた落差100mの清滝の回避は左へ小尾根を2〜3本トラバースすることで楽にクリア。回避に使った斜面は日当たりが悪いおかげでサラサラのパウダーが残っておりこれまた感激、45度はある斜面をロングターンで決める。 広い谷底に降りると目の前に清滝が落ちている。どうにか雪(氷?)がつながっている。バーチカル滑降?なら行ける?滝のすぐ脇も雪が張り付いているしここも滑れそう・・・など半分真面目な議論が出る。 谷底の傾斜が無くなってからが第2の核心部。雪は日射と気温でベタベタ、ターンしようにもスキーは雪面から離れない。。右岸の杉林に上ったところでやっと危険地帯から解放される。集中力が切れた体に鞭打って林道まで一滑り、車に着くと八海山が堂々と輝いていた。

過去にこのルートの滑降の記録は探し出せなかった。たぶん初トレースであろう。この手のルートはまた滑りたいとはなかなか思わない、だが今回のルートはぜひまた滑ってみたいと思っている。そのくらい価値のあるルートだと思う。いつ行くかって? まだ課題のルートが山積みなのでそれが片付いてから。

(須藤)

八海山・南面・屏風沢の滑走シーン3